mono3yu’s blog

ただ、自分と向き合う

たった一本の木

お題「これまで生きてきて「死ぬかと思った」瞬間はありますか?身体的なものでも精神的なものでも」

 

凍っている道路を車で走行中に滑って谷に落ちたときかな。

 

私の地域は冬でも雪が積もるのは年に1、2回くらい。だから冬に車のタイヤにスタッドレスを履かせる人はほぼいない。

 

その日の朝出勤の準備をしていると会社から、トラブルがあったから早めに来てほしいと電話をもらったので私は少し急いでいた。

 

会社の近くの道路を走行中、ほんの少し日陰になる場所(何年も通っていたが、そこが凍っていることなどなかったので何の躊躇いもなく)に進入した瞬間、タイヤがロックしてハンドル操作が効かなくなった。

え!?と思った時はすでに左の前輪が道路から落ち、右カーブだったこともあり、あっという間に車体が傾いてそのまま谷に落ちた。

どれくらい滑ったのかどのくらい落ちたのかわからないまま、やっと車が止まって静けさが戻ってきたので怖々と周りを見たら、少し上の方に道路からの明かりが見えた。命があることに安堵して何とか自力で車から脱出して会社に電話をかけて同僚に迎えに来てもらった。病院で診てもらったら鞭打ち程度でたいしたケガもなかった。

 

診察後に社に戻った私は事故の現場を見にいった同僚から「さすが悪運強いな」と言われた。

聞くと車体が止まったのは一本の木にぶつかったからだそうで、しかもその一本の木の他に木と呼べそうな木はそこには生えていなくて、だからその木がなければ谷底まで落ちていたと言われた。帰りに現場を見たがその木は幹の皮が痛々しく削られ、大きく谷底に傾いていた。本当にこの木に助けられたんだと思った。

 

その経験があってからというもの、今でも冬の朝、凍結した道路を走行するときは全身が強張る上、徐行でしか運転できないでいる。

 

滑ったと気づいたのは滑っている最中だったか静けさが戻ってきたときだったか今ではよくわからない。ただ車体と道路の擦れる凄まじい金属音と体に受けた衝撃はいまだに鮮明に蘇る。