半藤一利さんという作家を知ったのはいつの頃だったか。
半藤さんの書く血の通った文章で綴られた日本最後の戦争は私が授業で教わったとおり一遍のそれとは全く違うものだ。そしてそれこそが本当の日本最後の戦争だったのだと知った。
「安吾さんの太平洋戦争」
安吾さんとは言わずと知れた坂口安吾のこと。半藤さんは自分を勝手に坂口安吾の弟子と名乗るほどの安吾さん贔屓。私も安吾が好きなのでその気持ちはわかる。
そんな半藤さんが安吾が太平洋戦争をどう生きていたのか残された作品や知人の証言などから紐解いていく。
堕落論がどのようにして書かれたのか、特攻隊に捧ぐがどうして世に出たのか。桜の森の満開の下に込めた安吾の想いは。
半藤さんに出会って正しい歴史を知りたいと強く思うようになった。
それから半藤さんの書く文章には四字熟語や諺など所狭しと並んでいて、ときに柔らかくときに鋭く事実を伝えてくれるところも好きだ。
プライベートの言葉は短縮しがち、仕事では簡潔に伝えることを求められるようになって本来の言葉を忘れがちな私たちにとって、こういう文章に触れることができるのは教科書以上の価値があるのではないかと思っている。
読了後、やっぱり安吾を読みたくなった。