私が好んで読む本は史実を題材にした日本の歴史小説と言われるジャンルになるので、オススメになるのはコアファン向けということになろうか。
その中で何度読んでも涙腺が崩壊する作品を挙げようと思う。
まずは朝井まかて著「恋歌」
直木賞受賞作。
主人公は樋口一葉の師、中島歌子。
元は庄屋の娘。幕末の水戸藩の天狗党の志士、林忠左衛門に嫁ぎ人生を大きく変えていくことになる。
私は、水戸藩といえば幕末初期に内部分裂で早々に歴史の表舞台から姿を消す。貧困に喘いだ藩。そんな程度の知識しかない人間だ。
だからそんな藩にこんな志士がいたことも、こんな歴史があったことも知らなかった。特に牢の中での生活は想像を絶する。今と昔では価値観そのものが違うとはわかって読んでいるつもりでも、やはり罪のない女子供が男たちの信念の犠牲になっていくのは辛いものがある。
ー君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよー
歌子が残したこの歌はまさに恋歌。
朝井まかての手腕が発揮された作品だと思う。
次。
葉室麟著「無双の花」
武将好きなら誰もが知っているであろう立花宗茂が主人公。関ヶ原で西軍につき、その後浪人生活を送るも旧領地の大名に返り咲いた稀有な武将の半生を描いた作品。
葉室さんの作品はとにかく主人公がかっこいい。さることながら今回は宗茂の妻、誾千代もかっこいい。宗茂に仕える家臣もかっこいい。つまり皆かっこいい。だからとにかくかっこいい。
立花は裏切らない。
戦国の世においてそれはどんなに難しいことだっただろう。自分の信念が周りの人間を路頭に迷わせているとき甘い言葉をかけられて揺るがない人間がいるだろうか。浪人生活を送っている間に妻が死んだと聞かされた宗茂の葛藤たるや、20年の浪人生活を経て旧領地に返り咲いた宗茂の心情に思いを馳せる。
当然ながら涙腺が崩壊しまくりの作品。
最後はジャンルは違うが半藤一利で締めたい。
この作家はどの作品というのは難しい。し、泣ける本というお題であげるにはまだ重たい内容かもしれない。それでも二十歳前後の未来ある男子が命の花を散らしていく姿は涙なしでは読めないし、行き先を見失った国を命をかけて救おうとした人たちがいたことも確かだ。
先の戦争の日本人の精神を、日本国の善悪を惜しげなく文字に起こしてくれた作家である。
私たちは少なくともこういう作品に触れて理解しなくてはいけない。世界の中で日本が置かれていた立場、一般人を煽ったマスメディア、疑うこともせず大きな波に流された一般人。全てがマイナスに働いたとき、国はどうなるか。
歴史に学べ。